第25回記念 定期演奏会

25th定期パンフレット今回の前半のプログラムは、ベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」と交響曲「イタリアのハロルド」という2作品を取り上げます。

ルイ・エクトル・ベルリオーズ(Louis Hector Berliaz, 1803-1869)は、フランス・ロマン派音楽の作曲家です。
代表作はなんといっても「幻想交響曲」です。その次に有名なのは、本日も演奏する序曲「ローマの謝肉祭」といえるでしょう。

しかし、もう1曲演奏する交響曲「イタリアのハロルド」は、ヴィオラ独奏付交響曲であるということから、なかなか演奏されることはありません。
特に、アマチュアオーケストラの演奏会で取り上げられることは、ほとんど稀と言っていいでしょう。

実は、この作品をプログラムに載せるかどうか、団内ではさまざまな議論が起きました。

本日のメインであるサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」は、第25回記念演奏会で演奏することが以前から決まっておりました。
ベルリオーズの2作品は、それを受けて常任指揮者である田代先生からの推薦でした。
この理由の一つは、当団の弦楽器トレーナーで、ヴィオラ奏者でもある渡辺先生の存在です。
田代先生によると、「日本で『イタリアのハロルド』を演奏できるヴィオラ奏者は何人もいない。渡辺君はその一人である。」とのことでした。

この推薦を受けて、団内のパートリーダー会議では「果たして本当に演奏できるのかどうか」と何度も議論を重ねました。
「イタリアのハロルド」は演奏時間が40分以上であり、ソリストとのアンサンブル力も要求されます。
後半の交響曲第3番「オルガン付」と組み合わせることで準備が間に合うかどうか、本番時に体力が持つかどうかが議論の的になりました。
一方で、渡辺先生との二度目の共演を実現したいという声もありました。
最終的に長い議論の末、団員の投票によって演奏することを決定しました。

これまでの練習の成果を発揮して田代先生や渡辺先生の期待に応えられるか、ご来場の皆様に感動をお届けできるか、団員一同、精一杯演奏しますので、お聴きください。

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」 作品9

この曲は、ベルリオーズの作品において「幻想交響曲」と並んで人気の高い作品です。
演奏時間が、8分と手ごろであるために演奏機会はこの曲の方が多いでしょう。
歌劇「ベンヴェヌート・チェッリーニ」から、素材が取られ、曲が組み立てられています。

出だしからイタリアの青い空を思わせる快活な動機から始まります。
そのあと、イングリッシュホルンによる牧歌的なメロディが出てきます。そのメロディが、弦に引き継がれます。
その後、冒頭と同じアレグロの主部となり、最後まで華やかな雰囲気のまま曲は終わります。

当団では、第8回定期演奏会に続いて二度目の演奏になります。
蛇足ながら、「のだめカンタービレ」の第10巻にプラティニ国際指揮者コンクール一次予選での、千秋の課題曲その1として登場します。

ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」 作品16

先にも書きましたが、ヴィオラ独奏付の交響曲です。1834年6月に完成し、11月に初演されました。
「幻想交響曲」の作曲・初演は1830年です。作曲年代が近いためオーケストレーションもどことなく「幻想」に似ています。
「幻想」では、「断頭台への行進」や死後の世界の表現など病的な面を持っていますが、それに比べるとこの曲は健康的です。

ストラディバリのヴィオラを手に入れたヴァイオリンの名手ニッコロ・パガニーニが、「幻想交響曲」を聴いて感動しベルリオーズにヴィオラ協奏曲を頼んだところ、最初乗り気であったベルリオーズですが、だんだん肩の荷が重くなり、協奏曲をあきらめてしまった…という逸話があります。
真意のほどはわかりませんが(おそらく作り話でしょう)、そのためか4楽章になるとだんだん独奏ヴィオラの出番が減ってきます。

ヴィオラの名手というのは少ない上、この曲は「幻想」に比べると地味であるためでしょうか、あまり演奏される機会はありません。
日本でも指折りのヴィオラ奏者をお迎えしての本日の演奏会にお越しいただいたお客様は本当にラッキーです。

曲は4楽章からなり、イギリスの詩人・バイロン卿の『チャイルド・ハロルドの巡礼』に基づいて作曲されています。
各楽章には、それぞれ以下のとおり表題が付いています。

第1楽章
山の中のハロルド、憂欝(ゆううつ)と幸福と歓喜の情景
第2楽章
夜の祈りを歌う巡礼の行進
第3楽章
アブルッチの山人が愛人に寄せるセレナード
第4楽章
山賊の酒盛りと前の情景の思い出

本日のソリストは、もう7年間も当団の弦トレーナーをしていただいている渡辺先生です。
渡辺先生は第20回記念定期演奏会にブルッフのヴァイオリン協奏曲に続いての2回目の登場です。

サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 作品78「オルガン付」

<オルガン付>の愛称で親しまれている「交響曲第3番」はその名のとおり、パイプオルガンを交響曲の中に取り入れていることが最大の特徴となっています。
今回はパイプオルガンの子孫とも言える電子オルガンを使って演奏しますが、まず、パイプオルガンのお話をいたします。

パイプオルガンの仕組み

パイプオルガンは鍵盤を使って空気を送り込み、パイプの笛を鳴らす楽器です。
パイプの音が鳴る仕組みはリコーダー(縦笛)と同じです。

一度に複数の音、和音を出すために鍵盤があり、また、様々な音色を作るストップ装置が付いています。
ストップとは、それぞれ異なる音色を持つパイプの音階の列を数種類から数十種類作り、組み合わせや使い分けによって音色や音量に変化をもたらす装置です。
鍵盤の左右にあるシッチ(ストップ・ノブといいます)で操作します。

それぞれのパイプは形、素材(木、錫[すず]、合金など)、唇管かリード付のパイプかによってその音色が決まり、演奏する音楽に合った音色を数種類のストップから選択することができるようになっています。

それぞれのパイプは基本的に一つの音しか出せないので、ストップの多い大型オルガンではパイプの数は数千本にもなります。
(例えばサントリーホールのオルガンにはパイプが5898本入っています。)

パイプオルガンの歴史

オルガンの起源は古く、紀元前250年頃に北アフリカの都市アレクサンドリアで、その原形が発明されたという記述があります。
その後、10世紀頃からキリスト教会に設置されていき、合唱の伴奏に使われました。
ルネサンス時代(15、16世紀)には、技術革新が起こり、ストップ装置、足鍵盤を備えた、現代と基本的に同じパイプオルガンが作られました。
そして、17、18世紀にオルガン音楽は全盛期を迎えます。
その18世紀前半に活躍していたのが、あのヨハン・セバスティアン・バッハでした。

バッハの死後、オルガン音楽は一時衰退します。
それは、オルガンが得意とする多旋律音楽から、管弦楽の和声的な響きの音楽を好むようになっていったからです。
その上、革命や戦争で多くの教会とオルガンが破壊されました。

19世紀には大型のオルガンが多く作られましたが、当時のロマン派音楽の傾向として、ピアノ、管弦楽のように音量の強弱と自在な音色がオルガンにも求められました。
フランスでカヴァイエ=コルという制作者が、演奏しやすく表現力に優れたオルガンを制作し、それに刺激されて、セザール・フランクなどの作曲家がオルガン音楽の傑作を作曲しました。
サン=サーンスが「交響曲第3番」を作ったのはこのような時代だったのです。

そして現在では、表情豊かな音色を奏でる楽器として、パイプオルガンは日本も含めて」、多くのコンサートホールに設置されています。

パイプオルガンの特徴

パイプオルガンの特徴は空気が送られている間はずっと音が鳴り続けるということです。
音の長さを短くも長くも自由自在に操ることができます。
それから、オルガンは1台1台、形が違います。
設置する建物に合わせて設計され、パイプの本数は建物の響きに合わせて毎回異なり、配置の仕方も様々です。
1台1台が手作りであったため、パイプオルガンは2000年の歴史の間、常に新しい工夫が組み込まれ、進化していったのです。

建物そのものが楽器のような大きいパイプオルガンは<楽器の王様>と呼ばれるだけの迫力と感動を持っています。
ホールの空気を揺さぶるような、そんなオルガンの響きを、ぜひどこかで体験してみてください。

曲について

この「交響曲第3番」は1886年、サン=サーンス51歳の円熟期に作られました。
2楽章形式になっていますが、それぞれが2部に分けられ、通常の4楽章形式の交響曲とも見ることができます。
ただし、「循環主題」とうい一つの主要主題で全曲が有機的に関連づけられています。

第1楽章
第1部はアダージョの序章を持つアレグロ・モデラートの堂々たる冒頭楽章。
序奏が終わると、さざなみのような弦楽器により循環主題が演奏されます。この主題の変化系が最後まで随所に現れます。
第2部はポコ・アダージョ。オルガンの厳かな響きの上に弦楽器が祈るような美しいコラールを歌います。
第2楽章
第1部は華麗なスケルツォ。まず弦と打楽器の力強い主題から始まりますが、これも「循環主題」から変形されたものです。
プレストにはいるとピアノが彩りを添えます。二度目のプレストでは金管に新しいテーマが出され、この作曲家得意のフーガによって第2部へ結ばれていきます。
突然オルガンのハ長調の和音が響き第2部のマエストーソが始まります。
ピアノ連弾の華やかな音色とオルガンを含めた全オーケストラによって壮大なクライマックスが築かれ、豪壮華麗なこの交響曲を結びます。
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