特集!! 第20回記念 定期演奏会

20th定期パンフレット演奏会のときにお配りするプログラムには、その日演奏する曲目をよく理解していただくということと、相模原市民交響楽団をよく知っていただくという、2つの目的があります。

当団のプログラム作成のモットーは、当団しか作成できないものにまとめようということです。
曲目解説などでも、単に資料やCDのライナーノーツをもとにまとめたものにはせず、当団の演奏記録や当団にとってどのような曲なのかということを必ず盛り込むようにしています。第20回定期演奏会のプログラムでは、記念事業の柱としての演奏家への「道のり」をご紹介しました。

通常であれば、演奏会が終わってしまうと不要になるプログラムですが、今回は、演奏会にいらっしゃらなかった方々にもぜひご覧いただきたく、当サイトに転載します。

我々の活動に、少しでもご興味いただければ幸いです。

20回目の演奏会に寄せて

第20回定期演奏会への取り組み

相模原市民交響楽団では、20回目となる今回の定期演奏会を、数年前から大きなマイルストーンと位置付けてきました。
まず、20周年記念事業準備委員会による方向付け、次に実行委員会による具体的な準備と、段階を踏んで記念事業を推進しました。

その記念事業の柱は、

  • 記念定期演奏会
  • 記念誌作成

の二つですが、ここではとくに第20回定期演奏会についてどのような経緯をたどって開催にいたったかをご紹介します。

選曲について

マーラーの交響曲については、以前から団員の中で「20回記念ではぜひマーラーをやりたい」という希望が根強くありました。
しかし同時に、これがそう簡単なことではないということも共通の認識としてありました。

そんな中、2年前の第18回定期演奏会では、マーラー作曲交響詩「葬礼」をとりあげました。これは、「いつかマーラーに取り組むなら、その音楽に慣れる意味でも一度勉強しておくといい。」という常任指揮者の田代先生のアドバイスからでした。
このとき、多くの団員にとって初めて接するマーラーの音楽はとても難しいものでしたが、一方で目標としてかなり具体的に見えてきたと感じたのも事実です。

マーラーの1番をやることになった背景としてはこのような経緯があったのですが、そう簡単に決まったわけではありませんでした。

選曲のアンケート

第20回定期演奏会の演奏曲目を決定するにあたり、昨年の9月ごろ、団員にアンケートを実施しました。

その結果、コンセプトとしては、「20周年にふさわしい大曲」、「20周年だから、結束してエネルギーを」、「技術的飛躍、音楽的精神的向上をはかりたい」といった意見があがりました。また、「第1回演奏会のプログラムを再現」(ちなみに曲目はワーグナーのマイスタージンガー、メンデルスゾーンのバイオリンコンチェルト、ドボルザークの新世界)というアイディアも出ました。

具体的な曲目希望としては、マーラー(1、5番を中心として)、ブルックナー(4番ロマンティックが多数)が多数をしめ、ショスタコビッチ5番、レスピーギローマ3部作、サン=サーンス3番オルガン付きなど大曲が続きました。
20周年を機会に特別なものをやって、ステップアップしたいという団員の気持ちが強く出ていたのだと思います。

実行委員会での検討

このアンケート結果を受けて、実行委員会でにおいて検討を行いました。

  • コンセプトや曲目についてのアンケート結果を尊重しよう。
  • 全団員が必ず乗れるようにしたい。

    (オーケストラの場合、演奏曲目によっては使われない楽器というものがあります。プログラムによっては、ステージに乗れない団員が出てきてしまう可能性があります。記念演奏会なので、全団員がステージに乗れるプログラム構成を目指そうということです)

この二つを原則として、委員会としてはメイン曲の候補として、マーラー1番と5番、ブルックナー4番の3曲を推薦、演奏面からの検討にゆだねる事としました。

田代先生のアドバイス

コンサートマスターたちは、なかなか慎重でした。「うちにはまだ早い」「あの繊細さが出せるか、弦が心配だ」などなど。

一方、常任指揮者である田代先生は、「ブルックナーは、信仰心がない人間には無理だし、ショスタコビッチは20周年としてはやや暗いな」と、マーラー推進派に希望を与えつつ、「第1回にもどるのも良いアイディアかも知れない、『新世界』もなかなかいい曲だ…」と、簡単に結論は出されません。

しかし先生が最後に言われた、「マーラーは不可能ではないけれど、決して簡単ではない。相当の覚悟が必要。本当にやる覚悟があるか、みなさんに諮ってください。」という言葉が、あとで思うと、とても重要な意味を持ちました。

最終決定に向けて

先生の問いかけを受け、「練習は多くなるがどうか」、「分奏、パート練習を充実し、緻密にやる」、「とにかく練習にはきちんと出ること」など、団員にそれなりの覚悟ができているかをパートごとにただしました。
その結果は圧倒的に「それでできるなら、なんとかして、やろう」というものでした。
このような経緯をへて、マーラーの1番がようやくメイン曲目に決定しました。

次にオープニングとしては、第1回コンサートにちなんでマイスタージンガー(管楽器のローテーションの意味でも都合がいい)に決まりました。
そして中プロも、同様にバイオリン協奏曲を軸にすすめることになりました。
ソリストには、誰が言うともなく、トレーナーとして指導いただいている渡辺先生にお願いしよう、ということになりました。

実は先生には昨年の定期に向けた河口湖合宿で、オーケストラの練習のためにブラームスのコンチェルトのソロを弾いてあわせてくださいました。
聴きほれた団員たちがその夜お酒で盛り上がりながら、「ぜひ今度は舞台で聞かせてほしい」と話していたのが現実のことになったのです。
最終的に曲目のほうは、渡辺先生の考えもあってブルッフに決まりましたが、ドラマチックなすばらしい曲です。

このようにして、全曲目がようやく決定しました。
結果的に20回にふさわしい、とても魅力的なプログラムになったと自負していますが、いかがでしょうか。

マーラーの難しさ

相模原市民交響楽団では、ベートーベン6曲、チャイコフスキー3曲、ブラームスにいたっては4曲すべての交響曲を演奏してきています。しかし、マーラーの交響曲は今回が初めてです。

例年ですと、年末の合同演奏会が終了すると忘年会をやって御用納めになるのですが、今回は年末の「合同演奏会」が終了した翌週から練習を開始しました。

今回、まず団員を苦しめたのがドイツ語での演奏指示です。ある団員は辞書を片手に譜面に取り組みました。
田代先生からは、マーラー交響曲第1番の楽語対訳表が載っているホームページを紹介していただき、またある団員はドイツ語対訳表を作成しました。

実際に練習が始まると、マーラー独特のテンポの変化になかなかついて行けず、独自の歌いまわし・ニュアンスを表現することはさらに困難でした。
昨今アマチュアもずいぶん取り上げるようになりましたが、その精緻を尽くしたオーケストレーションの要求にこたえ、無上の優しさと激情が一瞬のうちに交差する変化を自分のものとして演奏することは本当に難しいのです。

しかしそれでも、練習を重ねるうち、全員の気持ちのせいか、トレーナーの先生がたの熱心なご指導のおかげか、「結構いいね」と田代先生が意外そうにほおをゆるめてくださることがたまに見られるようになりました。

長丁場の練習に対し今回は中だるみすることもなく、4月の合宿で盛り上がるなか、本日の演奏会を迎えることができた次第です。

指揮者・田代俊文先生

田代先生が初めて相模原市民交響楽団を指揮されたのが、1997年の秋の市民コンサートであり、このときは客演指揮者としてお招きしました。この後、正式に常任指揮者をお願いし、その後の定期市民コンサート合同演奏会はすべて田代先生の指揮で演奏を行っています。

田代先生にはオーケストラの基本的なことを丁寧に御指導していただいて、当団も確実に変化してきました。
田代先生も「長く付き合ってお互いを知れて、音も少し思い通りになってきました。だいぶ考えが判ってきたという感じです。」

練習を離れても、「八起」(相模大野の焼肉屋)での飲み会や合宿の宴会でも気さくにいろいろな話をしていただいています。

ソリスト・渡辺一雄先生

相模原市民交響楽団の練習は、3分の1程度を弦と管を分けた分奏にあてています。
渡辺先生は、当団の弦トレーナーとして、2年ほど前から御指導していただいています。渡辺先生は、ご自身がかつてオーケストラプレーヤーでありコンマスも務めたことがあるという方です。このため、指揮者とはまた違ったプレーヤーの立場からのアドバイスが、当団のアンサンブルに大きな影響を与えています。

昨年は、天満先生にソロをお願いしてのブラームスの協奏曲でしたが、渡辺先生はスコアを見ながらソロパートを演奏し、指揮をするという超人的な指導をしていただきました。
今回の演奏会でも、普段は弦トレーナーとして指導していただき、合宿の合奏ではソロを演奏していただきました。
協奏曲の練習では、通常ゲネプロ(演奏会前日の通しリハーサル)ともう一度ぐらいソロあわせがある程度ですが、今回の演奏会では非常に長い時間お付き合いをいただいています。

渡辺先生ご自身も、「ずっと指導してきているオーケストラでのコンチェルトはとても楽しみです。普段できないような思い切ったこともできます。」と話してくれました。

コンサートマスター

慎重だったと書きましたが、それというのも指揮者の意を受け、オーケストラの演奏に責任を持つのがコンサートマスターだからです。

相模原市民交響楽団のコンサートマスターは3名います。今回の演奏会では、その中でも一番若年の掛川貴史が担当します。昨年の10月に彼が語った、この演奏会へむけてのスピーチは自らの覚悟を訴え、団員の心をつかむものでした。

実際、彼はマーラーの大ファンで選曲時にも「まだ時期が早いのでは」という声もあった中、「やれますよ!」とつい言ってしました。マーラーをやるのであればぜひ自分がコンマスをやりたいと思っていたところ、団長から「やってほしい」と言われて最終的に決意しました。彼の決意に、ほかのコンマスをはじめ団員が深く感銘を受けて、みんなで精一杯のサポートをしています。

掛川も自分で演奏したいと思ってはじめたマーラーですが、はじめの3ヶ月ぐらいは「やっぱり、やめておけば良かった」と思ったことは事実です。
しかし、練習を重ねるにつれ、3楽章のソロ、そして4楽章のバイオリン・ビオラのユニゾン(ここにはフェルマータがあって、コンマス主導で演奏する)など、様になってきました。

定期演奏会に向けては半年間の練習の中、決して集中力が途切れることがなく、練習を重ねる毎に曲の中に新たな発見をし、それぞれの奏者がちょっとした新たなチャレンジをしていくような、そんな雰囲気を、コンマスの掛川も感じ取っています。

「私と心中するつもりでついてきていただければこれほど心強いものはありません。皆でグリーンホールに相模原市民オケのマーラーの1番を響かせてやりましょう。」と、本番にむけて抱負を語っています。

最後に

現在の相模原市民交響楽団は、団員の数も安定して増えてきて、先生方の熱心な、すばらしいご指導を受け、演奏会ごとに、少しずつ成長しているように感じます。

過去20年の演奏会を振り返ってみますと、創立の意気に燃えてがむしゃらに演奏した第1回定期演奏会、10年以上常任指揮者・音楽監督を務められた小松先生の十八番「幻想」に取りくんだ第10回定期演奏会、そして三石先生の指揮のもと演奏した「展覧会の絵」など、わが団にもエポックメーキングな演奏会はいくつかありました。

今回20周年を機会に、われわれにとってはなかなか手ごわい難曲にチャレンジしました。まだまだ未熟な技術ですが、10年後あるいは20年後に振り返ってみたとき、この挑戦が、次の発展に向かっての大きなターニングポイントになっていたといえるよう、本日は私たちの最高の演奏をしたいと願っています。

いささか思い入れが過ぎて、楽屋裏まで書いてしまいました。どうか、きょうの演奏会を心ゆくまで楽しんでいただくとともに、今後も相模原市民交響楽団を地域のオーケストラとして応援してくださるようお願いいたします。

本日は、ご来場まことにありがとうございました。

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