市民合同演奏会「第九」
ベートーヴェン:「フィデリオ」序曲
歌劇「フィデリオ」は、恐怖政治の犠牲となった愛する夫の苦難を救うため、男装しフィデリオと名のり、監獄に潜入して夫を救い出した、妻レオノーレの夫婦愛を描いたものである。
生涯独身で過ごしたベートーヴェンは、このオペラで理想の愛を表現したかったのかもしれない。
このオペラのために何曲かの序曲が作曲されたが、本日演奏する「フィデリオ」序曲は、オペラの雰囲気を伝える独立した音楽で、オペラの中の旋律は使われていない。
ブラームス:「ドイツ・レクイエム」より 第7楽章
ブラームスは、生涯を通じて多くの合唱作品を残したが、その中でも最大の傑作といえるのがこの「ドイツ・レクイエム」である。
レクイエムとは死者のためのミサ曲、すなわち死者の霊を鎮め慰めるカトリックの教会音楽で、普通はラテン語の詞を用いて作曲されるが、プロテスタントであったブラームスは、ルターのドイツ語訳聖書から詞を選んで作曲している。
このレクイエムに「ドイツ」という言葉がつけられたい意味は、詞がドイツ語であることに加えて、ブラームスが強くもっていたゲルマン的精神の純粋な表現、ドイツ人のためのレクイエムという特別な感情なども込められているものと解釈されている。
また、この曲が完成した3年後の1871年に歴史上初めて「ドイツ」という国が成立し、ドイツの統一が達成されたという歴史的背景も無関係ではないだろう。
この「ドイツ・レクイエム」は、ブラームスの全作品中随一の大作で、三十代半ばの時期に発表され、これにより彼の名声は決定的なものとなった。
本日演奏する第7楽章はこのレクイエムの終曲で、死によって永遠に解放される魂の安らぎを歌っている。
昇天した人々の幸福を祈るようにして穏やかにレクイエムは終わりを告げる。
詞
Selig sind die Toten,
die in dem Herrn sterben,
von nun an.
Ja, der Geist spricht,
dass sie ruhen von ihrer Arbeit;
denn ihre Werke folgen ihnen nach.
今から後、
主にあって死ぬ人は
さいわいである。
御霊も言う、
「しかり、彼らはその労苦を解かれて休み
そのわざは彼についていく。」
(ヨハネの黙示録:第14章 第13節)