第14回 定期演奏会

ニコライ:歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲

14th定期パンフレットオットー・ニコライ(1810-1849)は歌劇作曲家として名をはせたが、彼はまた、ウィーン・フィルハーモニーの創設者、初代指揮者であったことでもよく知られており、今でもウィーン・フィルハーモニーは定期演奏会のひとつを「ニコライ・コンサート」と冠して、創始者の功績を称えている。

代表作品「ウィンザーの陽気な女房たち」は、シェークスピアの喜劇から題材をとり、好色な老騎士ファルスタッフの浮気をウィンザーの町の女房達が一芝居打ってこらしめるというもので、1848年に作曲され翌49年にベルリンで初演された。

序曲名は、ゆるやかな序奏部とソナタ形式による軽快な主部からなる。
序奏はオペラの中の、ウィンザーの森の場面の音楽が用いられ、主部のさざめくような第1主題は、バレエ音楽が使われている。
第2主題は序曲オリジナルで、ヴァイオリンがオクターブで美しく歌い上げる。

イベール:フルート協奏曲

ジャック・イベール(1890-1962)は、今世紀フランスの作曲家の名かでも独特な存在である。アカデミックな形式にしばられずに霊感のおもむくままに作曲している。
手法的にも内容的にも洗練に洗練を重ねた上で出てくる表現は、新鮮で、エレガントだ。楽器の組み合わせもセンスにあふれていて、フルートとギターの“間奏曲”は彼の音楽の中では最もポピュラー。

フルート協奏曲は、フランスの名フルート奏者フルートの神様といわれるマルセル・モィーズに捧げられ1934年2月25日、モィーズの独奏でコンセルヴァトワールの演奏会において初演されている(ちなみにこの時の指揮者はフルートの教則本で名高いフィリップ・ゴーベール)。

フルート協奏曲といえばモーツァルトとイベールというぐらい、フルート吹きの中では代表格なのだが、オーケストラが非常に難しいのでアマチュア・オケでは殆ど演奏されることはない。

第1楽章(Allegro ヘ短調)
一応ソナタ形式によっているが、主題の再現部で両主題を対位法的に同時に出すというおもしろい方法を試みている。
第2楽章(Andante 変ニ長調)
独奏フルートの繊細で抒情的な歌が中心だが、主部再現部の独奏ヴァイオリンとの二重奏は特に美しい。
第3楽章(Allegro scherzand ヘ長調)
ロンド形式で活気ある特徴あるリズムと主題、中間部の牧歌的で異国情緒をもつ主題が印象的である。
最後に、フラッターやハーモニクスといった近代奏法を使った華やかなカデンツァがあり、輝かしく終わる。

チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調

6曲ある交響曲のうち、当団では昭和63年に第5番、平成4年に第6番「悲愴」を演奏し、今回いよいよ第4番に挑戦することとなりました。
彼の交響曲を語るとき常にセットで考えられるこの3曲は大変人気があり、演奏回数も多いですが、いずれも彼の人生観を一貫して追及し、告白しているといわれています。
第5番の「哀愁の中の安らぎ」、第6番の「悲愴」」に対し、この第4番は最も「情熱」的な曲です。
しかしそれは決して「甘い情熱」ではなく、戦争による社会の苦しみと、幸福を強く求める想いとの激しい闘いが表現されています。

第1楽章 Andante sostenuto - Moderato con anima
誰も逆らうことのできない運命を暗示するファンファーレで始まる。
この運命を嘆き悲しむ第1主題がワルツのリズムにのって繰り返されながら、徐々に絶望感は強まっていく。
続く第2主題では現実から離れた甘い幻覚による幸福感を味わうがそれも束の間、再び運命のファンファーレで現実へ戻される。
「運命」と「幸福を求める想い」との対立は最後まで続き、その激しさを強烈に印象づけ力強く終わる。
第2楽章 Andantino in modo di canzona
この楽章の内容は作曲者自身の解説を引用する。
「仕事に疲れ、ただ一人座り、取り上げた本が手から滑り落ちるという夕暮れのメランコリー。もう存在しないもの、過ぎ去ったものを想うことは寂しいことであり、しかも青春を思い出すことは心楽しい。若い血がたぎり、命が満ち足りていた喜びの瞬間もあった。しかし全てもうどこかにある。過去にひたっていることは悲しくもあり何か甘いものでもある」 ~フォン・メック夫人への手紙より~
第3楽章 Allegro Scherzo Pizzicato ostinato
全弦楽器がピチカート奏法(弓を使わず弦を指ではじく)のみという珍しい楽章。
機械的で駆け足のような弦楽合奏で始まる。やがて中間部では民族舞踊を思わせる木管合奏、遠くから聞こえる軍隊の行進を表した金管合奏が続く。
最後はこの三部が絡みあい、それぞれの断片を示しながら急激に減衰し、静寂へと戻る。
第4楽章 Finale Allegro con fuoco
突然の祭の騒ぎに始まる。続くメロディはロシア民謡「野に白樺は立っていた」からの引用であり、この楽章の中心となる主題である。ある時はエネルギッシュに、かと思うともの悲しく、おどおどしたり悲哀さを秘めたりしながら展開する。
最後は、民衆の行進曲風の第2主題によるファンファーレから徐々に盛り上がり、「運命」に勝利した喜びが高らかに響く。
pagetop
inserted by FC2 system